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          赤ちゃんの睡眠環境について

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

暖かで安全なおなかの中から広い世界へ出てきた赤ちゃんの最初の生活の場はお布団の上でしょう。特に新生児から3ヶ月くらいまでの赤ちゃんは、1日の大半、10数時間から20時間以上眠っています。この眠りは大人のように休息を目的にした眠りではなく、成長のための眠りです。そのため、赤ちゃんの眠る場所は、大切な成長の場所でもありますから、考慮してセッティングをしてあげる必要があります。

生後まもない赤ちゃんは、体温調節ができない上、体内で作る熱量が大変小さく、自己保温の能力が低いため外部の環境で保温しなければなりません。しかし、暖めすぎると、今度は熱が上がりすぎてしまいます。実は乳児期の発熱は、このような外部の温度因子でおこりやすく、発熱時に薄着にして、冷たいタオルで体を拭いて熱を発散させると、下がりやすいものです。
カナダの住宅は全室一定の暖房がなされていますから、あまり室内は寒くなることはありません。赤ちゃんの眠る場所は、風通しのよい、しかし、直接風のあたらない、また、温風の吹き出しにあたらない、直射日光のあたらない場所が好ましい場所です。またガラス窓のそばは温度変化が大きいので避けてください。

冬季は、暖房のせいで部屋がかなり乾燥します。乾燥していると赤ちゃんの鼻腔内や喉の粘膜に雑菌がつきやすく、かぜなどを引きやすくなりますから、適度な湿気が必要です。
特に2ヶ月ころから赤ちゃんは汗腺が発達し、 汗っかきの暑がりやになってきますので、吸水性のよい肌着や寝具を使用し、まめに取り替えます。
汗腺の数は大人と同じ、この数が小さな赤ちゃんの体表面積にあるのですから、水分はどんどん発散されてゆくわけです。赤ちゃんや子供が脱水症を起こしやすいのも納得できますね。
十分な水分補給(授乳など)と、温度、湿度調節に注意してください。

これらのことから考えて赤ちゃんの寝具に求められる条件は、保温性、吸湿性、放湿性のよい寝具です。シーツや、赤ちゃんのお肌に直接かけるものをタオル地や綿のようなものにすると、これらの条件も持ち、気軽に洗い替えをすることができます。敷き寝具は、赤ちゃんの骨がまだ固まっていないので、未発達の背骨や首の骨をしっかりサポートできる硬さの寝具を用意します。赤ちゃんを寝かせてからだが沈むような柔らかさはだめ。
赤ちゃんは寝汗をたくさんかき、特に寝返りができるまで背中がすぐ汗ばんでしまうため、吸湿性のよい綿素材を背中にあて、まめに取り替えてあげるといいでしょう。

            





 

 

 

赤ちゃんはクリブに寝かせるか、床に寝かせるか、どちらがいいでしょうか。本当は床よりクリブのほうが好ましいのです。6ヶ月未満の赤ちゃんには、まず周囲を柵に囲まれていて安全であることが第1、生後間もない赤ちゃんは動かないように思いがちですが意外にも足を蹴ったりする力が強く、体をよくずらしてしまうもの。柵が無いと落下の危険性があります。
新生児を動かないからと安心して、ソファやカウチ、大人のベッドにおいていて、落ちてしまったというアクシデントはよくおこります。そのような場所に赤ちゃんをおいた場合は、決して目を離してはなりません。
また、4ヶ月以降の赤ちゃんは寝返りができたりしますし、できない時でもかなり体を大きく動かせるので、柵が無いとより落下の危険性が出てきます。また、柵の間に腕や足を挟んでしまう、という危険もあるため柵の外側に手足で押し出せないように密着したガードマットをつけましょう。

クリブの高さは空気中のほこりをにも関係します。床上から10~15cmのところにはほこりの停滞する帯ができます。床に寝かせると、ちょうど赤ちゃんの顔の位置がその帯のところになり、ほこりを多く吸わせることになります。
また、周りを歩く人や階下の振動も響きますし、小さな子供や動物がいると、赤ちゃんの上に乗ったり、転んだりする危険もあります。冷気は下にたまりますから、赤ちゃんは大人の感じている室温より寒い環境に置かれることにもなります。

半年過ぎくらいから、夜泣きをすることが多いのですが、この時期、自分の布団に連れてきて授乳したりあやしながらもう1度寝かせる、ということが多く、そうすることで、クリブを嫌がるようになってしまった、というのもよく聞く話です。
でも、小さい赤ちゃんを大人のベッドで寝かせるのは、大人がつぶしてしまう危険性もある上、大人の布団で窒息させたり、逆に大人の体に布団を取られて、寒くなってしまったり、ということも。
できる限り夜泣きが落ち着いたらクリブに戻すようにするとよいでしょう。
または大人のベッドと同じ高さにクリブを持ってきて、大人のベッドとの境界をなくし、添い寝していても、赤ちゃんが寝たらそのままぞっとずらせるように工夫するとよいでしょう。

1歳以降の赤ちゃんは動きも活発ですし、体も大きくなってくるとクリブが狭くなってくる場合もあります。ちょうど自我も出てきますから、お母さんといっしょに寝たがる場合も多いでしょう。親子で大きなベッドで川の字に寝るのもスキンシップになるでしょう。(お父さんが嫌がらないなら)
しかし、よく動きますので、柵がないとやはり危険。大人のベッドサイドには、よくナイトテーブルが置かれていますが、これに頭をぶつけたりすることも多いのです。
仮に、壁側などに寝かせて、反対側に大人がいても、動く子供は大人を乗り越えて転がったりしますから、決して安全とは言いがたいのです。
やはり、自立の意味も含めて、子供は子供のベッドで寝かせるほうがよいでしょう。
クリブが狭くなったら、普通のツインサイズのベッドを与えて、必ず両サイドにベッドガード(市販されている普通のベッドに差し込んで使える転落防止の柵)をつけてください。ベッドガードはネット式になっているもののほうが首や体を挟む心配がありません。兄弟とバンクベッド(2段ベッド)で寝かせる場合は、小さい子供は必ず下を使わせてください。小学校くらいになれば、柵も必要無くなるかもしれませんね。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に赤ちゃんの眠る姿勢についてお話します。
6ヶ月を過ぎた赤ちゃんはもう自分で寝返りもできますし、体位の変換も自分で行ないますから、自由な格好で寝かせてかまわないのですが、それより小さな赤ちゃんは、十分な注意をして寝かせなくてはなりません。
赤ちゃんの寝方は、大きく分けて3つです。仰向けか、うつぶせか、横向きか。かって欧米ではうつぶせ寝が主流でした。柔らかい赤ちゃんの頭の変形も防ぐといわれ、偏平な後頭部を作らないようにと、日本でも十年以上前にうつ伏せ寝がブームになったこともあります。
しかし、現在ではうつぶせ寝を世界的に禁止しようと医療側は働いています。その理由は うつぶせ寝が 恐ろしい乳児突然死症候群の1大原因として指摘されたからです。6ヶ月未満の赤ちゃんは 首の骨も未熟で自分で体を動かすことは容易ではない上、まだ呼吸器機能も未熟です。うつぶせ寝によって鼻や口を敷き布団で圧迫し、窒息状態になり心肺停止状態に陥るというのは決してめずらしいことではありません。また長時間の胸部圧迫も呼吸機能を低下させます。
日本においても95年から97年の2年間において心肺停止状態に陥った乳児の7割が寝具上であり、その半数がうつぶせ寝で寝かせていたことがわかっています。
また、北米において、仰向け寝を指導普及させることにより、心肺停止状態に陥る乳児の数がうつぶせ寝が主流のころに比べ70%も減っている、というデータもでています。
いかにうつぶせ寝が危険なものかが、この驚異的な数字からもわかっていただけると思います。
赤ちゃんは、よくおっぱいなどを吐きやすいのですが、うつ伏せに寝は吐いたものを誤飲しにくく窒息防止になるといわれていました。ところが、吐いたものが布団や顔に付着し窒息につながることにも。
6ヶ月未満の赤ちゃんは必ず仰向けに寝かせましょう。
仰向けに寝たからといって赤ちゃんの頭の形が悪くなることはありません。形は遺伝で決まります。生後間もない赤ちゃんの頭の骨は柔らかいので、平らになったようにおもえるときもありますが、成長するにつれ、遺伝情報にある形に落ち着きます。
3~4ヶ月ころから後ろの髪の毛が薄くなってしまいますが、これも赤ちゃんの髪は細く軟らかで、すれて抜けやすいだけです。生後数ヶ月するうちに生えかわって、ふさふさになってゆきますからご心配なく。赤ちゃんの髪を一度そるとよい髪の毛が生えてくるという昔の話が年配の方から聞かれますが、これは迷信。とくに1歳未満の赤ちゃんの皮膚は薄くて傷つきやすいので、そると頭の表面に小さな傷を作りやすく、危険ですから止めるほうが賢明です。

赤ちゃんがおっぱいを飲んだ後げっぷをさせて飲み込んだ空気を吐かせるのですが、でる場合とでない場合があります。2~3分やってもでなかったら無理に出さなくてもかまいません。げっぷといっしょにミルクを吐き出したりすることや、飲んだ後で口からだらりとミルクを出したりすることもありますが、異常ではありません。吐くのが心配なときは飲んだ後に、赤ちゃんの背中にバスタオルのようなものを丸めて背中にあてて、少しだけ横向きに寝かせると、吐いても誤飲窒息する心配はありません。時々、左右に向けてあげると背中の風通しもできて快適です。ただし、ほんの少しの傾きにしてください。傾きが強いと、体が倒れてうつ伏せてしまいますから気をつけてください。
2歳までの赤ちゃんに枕は不要です。タオルをたたんだもので十分です。首の筋肉の弱い赤ちゃんの頭を高くしたり、固定したりすることは首の筋肉に帰って負担をかけてしまいます。

赤ちゃんを小さいうちから子供部屋で寝かせて、親は別室で休むのは一見自立を促すようですが、これは危険です。
赤ちゃんにはなにが起こるかわかりませんし、何か怠っとき赤ちゃんには回避する能力がありません。モニターをつけていても、親が寝てしまえば、何の意味もありません。
少なくとも、赤ちゃんが自分で立ったり座ったり、ベッドをおりたりできるようになるまでは、ご両親の目の届くところで休むほうが良いと思います。
赤ちゃんの睡眠環境を整えることは、赤ちゃんの生活環境を整えることでもあり、とても大切なことです。家族みんなで考えてあげてくださいね。

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